2021/10/19更新しました。
親の家の片づけが社会現象になっています。
遺品がありすぎて、処分するのに数十万円がかかるのは、もはや珍しい話でありません。
豪邸のたくさんの部屋、そのどこもかしこもモノで埋まっている。
手を通さず仕舞い込まれたまま、あるいは商品タグすらはずされないで、洋服タンスにぎっしり。
なぜ物が集まるのか、お伝えします。
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日本は資源が少なく物不足の国だった
私が子どものころ、布が貴重で、つぎに当てる布を手に入れるためにどんなに苦労したかを、とつとつと祖母が語り聞かせました。
祖母は針仕事が好きで、暇さえあれば何かを縫ったり、つくろったり。
長く忘れていたのですが、40も過ぎてから針と糸を使えば着るモノを長く持たせることができることに気付きます。
それにしても祖母は戦中、戦後のことをくり返し、くり返し語ったものでした。
「モノがなくてさ~。食べる物は春の山菜であるフキを樽に塩漬けして、冬はそれの塩を抜いて、少しずつ食べたもんだ」
近所のお婆さんが遊びにくると、昔話にいっそう花に咲くのです。
「米は供出したし、農家でも腹いっぱいなんか食えねえ。
そうして子どもを育てたけんど、いまはその子どもに叱られてよ。針仕事をしようと思って、昔のはぎれを出すと『そったら貧乏くせえごとをしなくても、新品が買えるべ』と息子が言う。すると嫁も『親戚の手前があるから、もっといい着物を着たらいいのに。いっつも擦り切れたものばかりで』と、冷てえんだ」
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子ども時代の刷り込み
小学校の高学年だった私は、曾祖母のところに遊びにきたお婆さんがそうこぼすのも聞きました。
明治生まれの曾祖母はモンペ姿で家の裏で畑仕事をして、梅干しも手作りで漬けて暮らしていました。
じつは私は曾祖母や祖母の手で育てられました。
20代前半で結婚した両親は数年後に離婚して、育児放棄。
祖母たちがいなければ、私は施設に預けられたことでしょう。
親代わりになって育ててくれたのが祖母や曾祖母です。
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着物が仲間を連れてきた!?
曾祖母や祖母はもうこの世にはいません。
ですが、「もったいない精神」は私の意識に深く刻まれました。
そうして自分で家庭を持ち、子ども達を育てる暮らしのなかで、モノがどんどん増えていきます。
モノはモノを呼ぶんですね。
私は少し前まで着付けにはまって、何枚もの着物を買ったことがあります。
それは高価な新品ではなくて、中古品。
いまは和服を着ない暮らし方なので、中古市場に着物は多く出回っています。
結婚のときに準備したと思われる訪問着や小紋や紬などが大量に投げ出されるように置いてある店も。
リサイクル店は着物がびっくりするくらい安かった。
着物って生地のほか裏地や仕立がいるため、ふつうに10万円以上します。
それが千円~1万円くらいで投げ売り。
つい、買ってしまった。
するとふしぎなことに1枚買うと、また欲しくなる。
それでまた買うと、もっと欲しくなって、一日中、着物のことばかり考えてしまうくらいになりました。
買い物依存
買い物って依存性があるんだと思います。
2,000円か3,000円の着物を買うことが楽しくて楽しくて。
でも、わが家は狭小住宅ですし、仕舞う場所が限られている。
あるとき、ふと気づきました、体がひとつしかないことに。
何枚もの着物があっても、着る体はこの身だけ。
しかも、自分で着ることができるとはいえ、地方では着物を着て街を歩くと奇異に見られることもあります。
私が着物を欲しかったわけは、祖母や曾祖母の影響があるに違いありません。
彼女たちは木綿のふだん着は持っていましたが、絹のよそ行きはあまり持っていませんでした。
それと、叔母たちが冠婚葬祭で集まると、貸し借りしながら着ていた光景が目にうかびます。
着物は祖母や曾祖母がもっとも大切にして、執着もしていた。
シンプルライフで大切なこと
物が多いと、整理や収納に手間がかかるし、手入れも必要。
増やさないほうが、暮らしやすい。
祖母達が生きた時代は、平成のような大型ショッピングタウンがない昭和です。
私は着物を集めましたが、それらを活用しているとは言えません。
シンプルライフを心がけるうえで、大切なことは持っているモノをきちんと管理して活用することです。
そうすれば散らからない。
まとめ
買ったのは訪問着や江戸小紋などの着物8枚と帯10本、ぞうりなど。
そのとき私は着物のことを考えていると、日々の現実を忘れて、独りでもちっとも寂しくありませんでした。
着物が生きがいになっていたのです。中古だったので、使った金額は20万円くらい。
いま冷静に思い返して自分の着物を眺めると、他人のお古に大切なお金を使って……という気がします。
でも、あのとき子ども達が巣立って、空っぽな私の心を慰めたのが着物でした。
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