先日、高校時代の友人と久しぶりにランチをしました。
その友人は若い頃、女優の賀来千香子に似ていて、お嬢さん育ち。いまはある会社のオーナー夫人です。
私からするとセレブマダムに映ります。
マダムは嫁に出た身ですが、実母が認知症になってからちょくちょく実家へ寄り、見守っていました。実父は10年前に他界。
そのお母様が亡くなったと聞いていたので、私はお悔やみを口にしました。彼女は認知症で壊れてゆく母親に寄り添ったので、介護にも看取りにも悔いはないと言います。
二人姉妹で姉が関東在住、妹である彼女は地元に住み、結婚後に自分たちの家を建て、ご主人とふたりのお子さんがいます。
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介護や葬儀でもめて、兄弟と疎遠に
「母が施設に入って、その後に肺炎で亡くなると葬儀でしょ。うちはうるさい親戚が多くて、それが参ったのよ……」
マダムは大きなため息をつきます。その昔は地主だったという彼女の実家は空き家になったそうです。
「毎日、朝夕は実家へ通い、ご仏壇にご飯をお供えしているの。姉はさっさと関東に帰ってしまった。気に入らないことがあったようで、この頃は電話にも出ないのよ」
遺産のことでもめたのでしょうか。詳しくは語りませんでしたが、介護のときから意見が合わなかったそうです。
「一番の問題は家なの。荷物が多すぎて、片づけは手つかず。おまけに親戚が家を丸3年はそのままにしたほうがいいと言うの。先祖をはじめ両親の思い入れがあるから。ええ、家の中にはとっくに亡くなった祖父母の遺品もたくさんあるのよ」
仏壇が大きすぎて自分の家に運べない
「私は疲れてしまった。いくら車で15分といっても、日に2度も通うのは辛いわ」
「じゃあ、ご仏壇を千香子さんの家に運べばどうかしら?そうすれば、お父様もお母様も寂しくないのでは?」
思いついたことを口にした私に、彼女はさらに深いため息をつきます。
「運べないのよ、あまりに大きくて。私が両腕を広げたくらいの大きさで、金漆を塗った立派なものだから、うちに入らないの」
それからこんなことも。
「お墓も大きいのよ。それは先祖代々からでね、土を盛ったひときわ高いところにあるの。でね、管理費もお寺にけっこうな額を納めないといけないし、法事に和尚さんをよぶとそれもびっくりするくらい高額なのよ。うちは下の子どもがこれから大学に入るから、とても実家の墓だの、お寺に払うお金はない」
マダムは目の下にクマができていました。若い頃の美貌はもうそこには残っていません。
空き家となった実家の処分も頭が痛い問題です。
田舎のため、タダ同然にしても売れそうにないからです。それどころか、家の解体費用で数百万が掛かるとか。
財産がたくさんあるでしょう?と聞いた私に、彼女は首を振りました。そんなものがあったら苦労はしない、父が受け継いだとき相続税を払うのに借金をしたし、土地だけでお金はないのよ、と。
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事業の不振が追い打ちをかける
「私たち、若い頃はまさか中年以降にこんなに経済的に苦しむとは思いもしなかったよね」
マダムと会うと、そんなことを言い合います。彼女のご主人は自分の実家の仕事を継ぎました。かつては手広く支店も出していた老舗。
彼女は経営陣のひとりです。
「結婚したころは役員報酬やボーナスがあったけれど、今じゃ全然。倒産したらと考えると夜も眠れない」
身につまされる話でせっかくのランチでしたが、料理の味もイマイチで気分が沈んだままお開きとなったのです。
まとめ
70代~80代の方はお葬式やお墓にこだわる傾向がまだあります。成仏や心の平安という仏教感というよりも、親戚の手前や見栄があるみたい。戒名をつける習慣は日本だけと聞いています。葬儀に日本人は平均200万円くらいをかけるため、少数ですけれど、なかにはキリスト教に改宗する人も。葬儀のほか位牌堂やお墓の維持にもけっこうお金がかかるからです。
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