(2019/03/16更新しました)
ファストファッションが、あふれんばかりにショップに並ぶ時代です。服を買っては使い捨てる、そんな生活が定着しました。
クローゼットから衣服があふれだして床に散乱しているのに、まだ欲しい方や、被服費が家計を圧迫しているときは、考え方を根本から変える必要があるでしょう。
シンプルライフの参考になる本『990円のジーンズがつくられるのはなぜ? ファストファッションの工場で起きていること』長田華子著を読んだので、紹介します。
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首都ダッカに縫製工場がひしめく
さて、ファストファッションがどこの国で生産されてご存知ですか?
中国? インド?
答えはバングラデシュです。かつては人件費の安さから中国に衣料品の生産工場がありましたが、人件費が高騰しバングラデシュへ移りました。
バングラデシュの女性たちは、日本の伝統的な刺し子のような「カンタ」を作る習慣があり、小さいときから針仕事を身につけることが多い。
手先が器用で忍耐強く、従順なことから安いコストで雇い続けることが可能。
そんなバングラデシュに世界中のアパレルメーカーから注文が相次いで、工員は納期に追われています。
縫製工場のビル崩落
経済発展の途上にあるバングラデシュ。
2013年4月24日午前8時45分に8階建てのラナ・プラザが突然、崩壊しました。
5つの縫製工場が入っていて、死者数は1,137人。ケガ人も多数という大参事。ビルに大きなひびが入るなど予兆はありましたが、防ぐことができませんでした。
その理由は、ビルの所有者サヘル・ラナが工員たちを棒で叩きながら仕事をするように強制し、工場の経営者や管理者も「逃げたら給料を払わない」と、恐喝したから。
午前8時に仕事を開始してまもなく、大きな音をたてて崩れ落ちました。
死者にろくな賠償金がなされませんでしたが、2015年に発注元のイギリスのベネトンが、約1億3200万円の補償の支払いに合意。
工員への最低賃金も引き上げられ、月に約4000円から7100円に。それでも労働者の暮らしはいぜん厳しいのです。
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児童労働
途上国の縫製工場では子どもが働いているケースがあります。
それは下請けや孫請けなど零細な工場でとくに多く、生家の貧しさから学校へ通えず仕事に就くのです。
補足すると、児童労働は世界中にまだはびこっていて、アフリカのカカオ農園、パキスタンのじゅうたん工場などが知られています。
日本では戦後の経済成長以降、児童労働は影をひそめました。いまでは農家の子どもでも田畑を手伝うことはめったにありません。
しかし、終戦直後は親を戦火で失い、子どもたちが売り買いされることがあり、男児は農村の労働力、女児は花街へというケースも。
経済がひっぱくすると、しわ寄せが弱者に向かうのは万国共通です。
なぜ990円のジーンズが作られているのか?
グローバル企業は世界を相手に、売り上げを伸ばすことを至上目標とします。利益確保のためには、手段を厭いません。
利益を上げれば株価が上昇し、さらに資金を集めて大きな活動が可能になる。
990円のジーンズは、徹底的なコスト削減の賜物(たまもの)です。
工場が汚染された廃液を垂れ流しても、現地の環境を気にかけず儲けに邁進するケースがあります。
また、ナイキの下請けなど現地工場ではかつて、工員のトイレ休憩の回数を制限し、水を飲むわずかな時間も勝手に摂ることを許しませんでした。
この問題となった工場はベトナムにあって、現地の管理会社は韓国企業。
利益追求という潮流は安い服や商品を求めるニーズがあるかぎり、止めることはできないでしょう。
大量に捨てられる衣服
バングラデシュで作られる衣料品のなかに、990円のジーンズがあります。しかし、けっこうな手間がかかって、合計で66工程も必要。
パーツごとに、およそ70人の工員の手で縫われて、日本にやってきます。
しかし、どうでしょう。
そんなに大切に着られることはなく、廃棄されることが少なくない。
日本の家庭からでるゴミのうち、衣料品が占める割合は高くなっていますが、リサイクル率は缶やペットボトルと比べると、とても低い。
かつては5年、10年と大切に着ていた服を、1シーズンでゴミに出す生活スタイルが定着している証拠といえるのではないでしょうか。
エシカルファッションへの移行
ファストファッションと正反対なのがエシカルファッションです。オーガニックな綿花に代表される素材で、搾取しない工場で生産しフェアトレード(公正な取引)により売られている衣料品。
ファストファッションを不買運動すると、現地の工員が生活に困ることになります。
けれど、少しずつエシカルな方向へ転換して、衣料品のゴミを減らしてモノを大切にすることが、地球の環境を守ることにつながります。
『990円のジーンズがつくられるのはなぜ? ファストファッションの工場で起こっていること』を書いた長田華子さんは、茨城大学人文学部の准教授。1982年、東京生まれですから、若手の学者です。
さて、ショッピングタウンには安い服があふれて、個人のクローゼットもぱんぱんというケースが珍しくありません。
「もっと買い物がしたい」という欲望に、打ち勝ちたいとき役立つ一冊です。
まとめ
私は読み終えて、バングラデシュはかつての日本の姿だと思いました。
1960年代の日本では金の卵と持ち上げられて、東北地方から中学を終えるや集団列車に乗せられ、縫製工場やガラス工場で働く工員がいたからです。
「安い給料でめいっぱい働いた。学歴がないから、年を経てもうだつが上らなかったけどな」と私に教えてくれたのは、70代の方。
この本は、衣料品が作られている現場や、世界と日本のつながりを解かりやすく書いて、読みごたえがありました。
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