『そこまでするか!モンスタークレーマー』という本を一気に読みました。苦情・クレーム対応アドバイザーの関根眞一さんが著者。
「すごいモンスター続々、現代クレーマー事情」という帯が本にあるのですが、あ然とする内容です。
デパートや飲食店のお客さんがクレームをつけることはよく耳にします。この頃は歯科医や産科にも常識はずれの患者がいて、対応を迫られている。
一般の暮らしにも役立つことなので、紹介したいと思います。
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苦情とクレームの違いとは?
私の夫は自営業者で小さな店舗を構えています。なので数は少ないけれど、苦情やクレームを頂いたことがありました。
地域で商売を営んでいると、何よりも怖いのはお客さまを失うことです。ですから、私どものような小規模事業者は相手の要求をぎりぎりまで受け入れようとします。
ところで、苦情とクレームの違いがわかりますか?
- 苦情は、不満や不公平なことに対して改善を要求すること。
- クレームは、ケガや被害を受けたことに関して代償や補償を要求すること。
実は私、クレームというか苦情を頂いたとき、受け取った料金に箱菓子を添えて、その方のお宅にお詫びに伺ったことがあります。
ご近所だったのです。
そうしたら、先様も恐縮したのでしょう。後から「そんなことはしないで」と、お菓子と料金が戻ってきました。その方は今も常連のお客様です。
お客様が善人であって、本当に良かったと、つくづく感じました。なぜなら
この本には、とんでもないクレーマーが登場するからです。
モンスタークレーマーは一流企業の社員?
本によると、ある百貨店に粘着質にねちねちとクレームをつける男性がいました。
とにかく些細なことに目くじらを立て、あちらこちらでトラブルをまき散らすので、その県下のお客様担当なら、知らない人がいないほどの有名人。
ときにはデパートの対応が気に入らないと、東京の本店へわざわざ出向いて暴れることも。
そのクレーマーは自分は一流企業の社員だと名乗ったことがあるが、聞いた方は「まさか」と、半信半疑だったとか。
しかし百貨店とその企業とは取引があるから、訪問して確かめると、ほんとうに社員だったそうです。
それ以来、クレーマーは現われなくなったそうですが、年収が高くてもそんなに性格が悪ければ、誰からも相手にされなくなるのではないでしょうか。
勤め先と人格は別なので、当たり前といえばそうですが、ブランド名につい人は惑わされてしまうものかもしれません。
インプラントは成功しても
歯科医院でのクレームは、「インプラントは本当に必要だったのか、もしかしたら騙されて、高いインプラントを自分はされたかも」と、治療費35万円を返してという患者の言い分。
しかし、施術は成功しているし、なんといっても患者が納得して受けたインプラントです。
「でも、知り合いに聞いたら、インプラントは必要でなく差し歯でよかったのでは? と言われ、心が揺れた」とのこと。
その入れ智恵は歯科医からで、成功したインプラントにケチをつけるもの。
真に受けてすべて返金していたら、その歯医者はつぶれてしまいますよね。
「過当競争の歯科医は、同業者同士でつぶしあう熾烈な世界」
クレームを付けられた歯医者はなげき、時間を掛けて説明をしてようやく患者も引き下がったそうです。
飛び込み出産にモンスターペアレントも
『そこまでするか!モンスタークレーマー』には、陣痛が始まってから産科に飛び込んで、そのまま出産。
あげくに出産費用を払わない失業夫婦が載っています。
『そこまでするか!モンスタークレーマー』
関根眞一著 講談社刊
本には、鉄棒の逆上がりができない子に対して行った居残り授業が気に入らないと、学校に乗り込む母も。
そのモンスターペアレントの夫は京大卒。
「先生、どちらの大学?」
「うちの子をちゃんと教えられるの?」とイヤミや暴言を吐き、子どものクラスメイトの親たちにラインなどで話を大げさをばらまくのだとか。
傍で聞く分には面白いのですが、これ現場の先生はたいへんですね。
悪質な事例
- カレー店で食事して、帰り際に皿を下げた店員にカレーを服に付けられたと訴える人。「ビンテージ物のジーンズ上下だから、購入代金の7万円を払え」
- 焼肉店での飲食後に腹痛を起こしたと騒ぎ、医者とぐるになって慰謝料をせしめようとするグループ。店が狙われる事例で治療費8万円以上を要求。
あるいは悪意ではないのかもしれないが、暇を持て余した団塊世代の老人が毎日のように、テレビ局に電話をして、延々とアナウンサーの服装やニュース内容を批判する。
受ける方は対応に時間を取られるし、労力も要るわけです。
真意を見抜く
苦情の世界では、異常性を感じることが往々にある。しかもそれが長く続くことも。
金品目当てよりずっと厄介なのは、性格に偏りのある方からの一方的でしつこい言い分です。
解決までに時間がかかり、相手の真意がどこにあるか見抜くことは困難。著者は、ケースバイケースだが、意外な原因があると明かしています。
- ピザ店に言いがかりをつけていた常連の若者は、その父親が大手ピザ屋の取締役だったが、リストラされてそのことを恨んでいた。
- スーパーに勤務するバイトの女子高生をターゲットに、いつもいつも怒鳴り散らしてイヤミを言い放っていた老夫婦。その心理は、一人娘が結婚し、海外に移住し寂しかった。
事前に相手の心理を予測すると、対応する側の気持ちが落ち着くそうです。
人間心理に関連した過去記事も合わせてお読みいただけると、うれしいです。
真摯に謝罪して、冷静に頭の中で整理する
相手は興奮して腹を立てて、クレームや苦情をまくしたてることがあります。
それでも、まずはじっくり聞いて、冷静に頭で時系列を整理すると良いそうです。
そして現代は、5人に1人の割合で苦情を言う時代で、なかでも教育機関に対する苦情が増えています。
- 謝罪は電話よりも直接、訪問して伝えたほうがベスト。
- 詫び状を書くときは、わずかな言葉遣いにも注意を。相手の燗に障ることがないように。
詫び状
詫び状の例文が本書には載っていました。長いので極意だけ紹介しましょう。
百貨店での駐車料金のトラブル事例です。
文面の最初は時候のあいさつから。
こちらの不手際を認めて丁寧に謝罪します。
具体的にミスを認めたうえで「さて、詫び状ですが、この件につきましては書面で済む問題ではないと当社で判断いたしております。もちろん謝罪文も持参いたします」と書く。
拝顔の上で詫びることを告げると、相手は案外、会うことを嫌うものだそうです。
さらに、丁寧な文面を心がけるとよいでしょう。
「……本当にご不快な思いをさせてしまいましたことに、心より謝罪しますとともに、今後この失敗を生かして、社員一同に気の利いた対応を徹底してゆく所存でございます。
また〇〇様からお知らせがいただければ、今後も気づかずにたくさんのお客さまにご迷惑をかけていたことと、そら寒い思いをいたしております。ご意見にも併せて感謝を申し上げる次第でございます……」
まとめ
人は感情の生き物だから、ささいなことで気持がすれちがい、腹を立てる。本書ではクレーマーとレッテル貼りをするのではなく、こちらにも改善できるところは努力しなければならないことが書いています。お客様が求めるのは心の満足。
現代は心のふれあいや機微に飢えている時代です。非があったときは真摯に謝る、その謝罪の仕方が載っていて、おススメの一冊です。
2018/07/06に一部を補足し、更新しました。
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