2024年4月12日こうしんしました
『夫の墓には入りません』垣谷美雨の小説を読みました。
少し内容にふれると、40代の夫が突然死して、葬儀の場面から始まります。
夫婦に子どもはいません。
東京生まれの妻ですが、夫の実家がある九州に暮らして、海が見える丘におしゃれな戸建ての家をとても気に入っています。
上品な義父母とうまくやっていけるはずが、次第に暗雲が垂れ込めて、姻族終了になるという小説。
姻族終了というキーワードをテーマにした、この本についてお伝えします。
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嫁をやめる日
ネタバレにならないように、簡単な筋を紹介しますね。
東京下町で生まれ育った主人公の高瀬夏葉子(たかせかよこ)は、46歳の夫を脳溢血でとつぜんに亡くしました。
滞りなく葬儀が進みますが、ふりかえれば15年の結婚生活で数えるくらいしか、共に食事をしたことがありませんでした。
夫は仕事を言い訳に家に戻らずに、死亡したときもビジネスホテル。
夫の地元である長崎に暮らして、海の見える素敵な家を手に入れていますが、夏葉子は自分は愛されていなかったと感じてしまうのです。
どうやら夫には、恋しい女性がいたのだろう。
そんなとき、夫の同級生だというサオリが「線香をあげたい」と家に来ました。
義父母の期待としがらみ
夫の実家は裕福で、上品な名家です。
義父母ははじめ、嫁が東京に帰ってしまわないように、大きな仏壇を買ってあげます。
未亡人となった嫁を気遣うのですが、姑は前々から息子夫婦の家のカギを持っていて、いつでも出入りが自由なんですね。
パート勤めを続けている夏葉子が帰宅すると、姑が仏壇を自分の友達に見せたりして、なかなかたいへん。
そして、家には亡き夫のスーツがたくさん遺されて、その処分にも困ってしまいます。
墓守で一生を終えるの?
40代の若さで息子を亡くしたので、義父母は墓を準備。
なんとそこには、夏葉子の名前が朱の字で彫られていたんです!
(もう若くはない嫁だから、認知症が始まった舅と姑、そして引きこもりの姉のめんどうをみなきゃ、いけないの?」
主人公は、クモの巣にからめ捕られた気分になるんですね。
それで、東京の実家に帰省して、今後のことを父と母に相談。
すると、ふだんは無口な父親が、「それはお前を『つぶしてもいい人間』だと思っているんだ」と、話すのです。
- 俺の大切な娘が、なんで死んだ亭主の家族の世話までしなきゃなんねえんだ
- 嫁なら自由にしてやるのが、本当の愛情だ
- たとえ親身に世話しても、子どもがいないお前には相続権が一切ない
- つぶしてもいい、便利な人間だと思われたら、軽く見られるだけ
そういうわけで父親は長崎に出向いて、義父母に話してくれることになったのですが……。
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姻族終了届
戦前なら一旦、嫁として嫁ぎ先の人間になったら、たとえ夫が戦死しても舅や姑に仕えて、暮らしを支えることが美徳だとされました。
現在では、姻族終了届が提出されると、夫の親族側の法的な義務を嫁が負うことはありません。
もちろん、夫が死亡したケースにのみ受理される届です。
民法には、同居の親族は、互いに助け合って暮らす相互扶助の文言がある。
姻族を終了すると祭祀継承者、つまり夫側のお墓や仏壇を祀り、守る義務からも解放されるでしょう。
では、デメリットは?
それは姻族終了届が受理されたら、復活はできないこと。
なので、慎重に考えましょう。
なお、姻族終了届を提出しても、遺族年金は受給が可能。
姻族関係終了届を提出する際に必要なものは次のとおりです。
姻族関係終了届 1通 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 1通
※本籍地に提出する場合は不要なことが多い
印鑑(認印可)
届の持参者の身分証明書(運転免許証等)
これらを持参して、生存配偶者の本籍地または所在地の役所に届と戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を提出します。
本籍地以外の役所に提出する場合は、届が2通必要になることがあります。
姻族関係終了届の効果やメリット・デメリット等をわかりやすく説明!
補足ですが、血族関係ではいくら大喧嘩をして勘当されても、法的な縁は切れません。
また、親族だと扶養義務はありますが、同居していなかったり、同一世帯でなかったりしたときは、できる範囲での扶養努力となります。
たとえ親族であっても、自らの生活を捧げ尽くして生活費を援助し、借金の肩代わりとかは負わなくても良い。
ただし、連帯保証人となっているときは、負債から逃れることはできないでしょう。
連帯保証人は、たいへんに重いことです。
ちなみに一般的には、肉親は3親等までが相互扶助の対象です。
未亡人リスク
本の主人公・夏葉子は44歳。
人生を新たに歩むことが、可能な年齢にちがいありません。
最後の方で、亡き夫が実は恐喝され続けて、ストレスフルな年月を送っていた事実が明かされるのです。
さて、夏葉子は独りで胸を張って生きていこうとしますが、世間の冷たさも感じるのですね。
女性の1人暮らしは不用心ですし、保険金などの財産を狙うような人物もいるのですよ。
もしも夫に死なれたらどうしよう。
ドッキリしながら読み進めた一冊です。
『夫の墓には入りません』は、「嫁をやめる日」を改題したもので、キンドル版にもなっています。
著者の垣谷美雨は、「老後の資金がありません」「あなたの人生、片づけます」など著書多数。 読みやすい文体の作家です。
まとめ
姻族終了をテーマにした垣谷美雨の『夫の墓には入りません」を読了しました。
ちょっぴりミステリー仕立てて、結婚と夫婦のありかたについて考えさせられる一冊。
夏の読書におススメです。
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