韓国で明らかになった「n番部屋事件」をご存じですか。
年少者を勧誘し、個人情報を聞き出して脅し、虐待動画を撮影して有料会員に配信したというものです。
ネットを使った悪質な事件、日本では無縁でしょうか?
年若い世代をモノのように商品化するケースは、私たちが知らないだけで実は横行しているのかも知れません。
桐野夏生の小説「路上のX」は、お子さんをお持ちの親御さんにぜひ読んでほしい冊。
本の感想をネタバレせずに、お伝えします。
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n番部屋事件とは?
テレグラムというアプリを使った韓国の事件です。
被害者のなかには中学生も含まれていました。
最初は親しげに若年者に近づいて、心理的に支配するグルーミングの手法が利用されたとのこと。
事件の内容は凄惨としか言いようがない。
舞台となったのはテレグラムというコミュニケーションアプリ。
罠にかけられ、脅迫された女性たちのわいせつな動画が、この中で配信されていた。
そしてその動画を何千、何万人が視聴していた。
被害者は警察が把握しているだけで少なくとも74人、未成年も10人以上含まれる。
女性たちの動画が配信される「部屋」は数十個存在し、有料の会員制。
登録には25万ウォン〜155万ウォン(約2万2000円〜13万3000円)ほどかかり、高額になるほど過激な動画が配信される傾向があったようだ。
首謀者たちは会員から高額な利用料を徴収して、大儲けだったのでしょう。
日本でも、ネット被害に遭う未成年者は増加。
性被害の相談・2割が中学生と小学生の高学年となり、SNSの危険性が叫ばれています。
決して対岸の出来事ではありません。
おもに少女が狙われていますが、少年が被害者であることも少なくない。
それでは親御さんはどんなふうに、子ども達を守ることができるのでしょうか?
路上のX
『柔らかな頬』で直木賞を受賞した桐野夏生といえば、ミステリー作品が知られています。
『路上のX』の主人公、真由は中学を卒業して間もない高校一年生。
お嬢様学校への進学が決まっていたのに突然、親の事情で、叔父さん夫婦の団地に預けられることになります。
高校は結局、吹き溜まりのような公立高校にむりやり転校させられ、しかも、真由は叔母に全くなじめません。
叔父夫婦には子どもがふたりいて、元々暮らしに余裕がないのに、真由を預けられ、迷惑なんですね。
叔父夫婦の家に居場所を見つけることができない真由は、渋谷を中心とした都心をさまようように。
ラーメン店で住み込みのアルバイトをしますが、そこも決して安全ではない。
16歳になったばかりの少女が、過酷なサバイバル生活 。
やがて、さまざまな誘惑のワナが仕掛けられて、真由は助けてくれた女友達と知り合うのです。
路上のX
桐野夏生著
462ページの長編小説なので、コロナウィルスの影響により、どこにもでかけることができないこの時期にぴったり。
桐野夏生さんのインタビュー記事があります。
連載を書き進めながら、夜の秋葉原や渋谷、新宿の街を歩き、少女たちの様子を観察した。
元JKビジネスの経営者やスカウトマンの取材もしたと言う。
「母子家庭はアツい」—経済的に困窮しているので風俗産業やJKビジネスに取り込みやすいから—とか、17歳以下の女の子たちは「肉の付き方が違う」「恋愛対象だ」などと目を輝かせて語る中年男たち。
その根底には、お金を欲しがっている女の子の欲求を満たしてやっているという優越感、差別意識はあっても、彼女たちの心と体を搾取しているという罪の意識は全くなかった。
年若いアイドルタレントのあり方にも、注意が必要な日本の社会です。
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どう守るのか
真由は、渋谷をさまよううちにJKビジネスで生きる少女達と知り合います。
ネグレクトや児童虐待により家庭から放り出された少女達は、真由よりもしたたかであり、もろさを抱えていました。
この小説は、親の生き方や考え方が、子どもにいかに影響を与えているかを示唆。
後半で真由の家庭が、なぜ 崩壊したかに触れられ、それは私にとって衝撃でした。
やっぱり不倫は、子どもに悪影響を与えますね。
みなさん、不倫はやめましょう!
せめて高校を卒業するまで、子どもには家庭という居場所が必要です。
どうしても養育できないときは、ほんとうに誠実な大人か、児童養護施設に相談するのが適切。
そんな感想を抱いた一冊です。
50代半ばの私が読んでも、とても得るものが大きい本でした。
まとめ
桐野夏生『路上のX』についてお伝えしました。
リアルな描写に体が震えました。
現実社会にも、身の毛もよだつ事件が明らかになって、今このときも辛いな目に遭っている年少者がいるのだろうと、感じます。
人身売買や奴隷は、過去の話ではありませんね。
思春期のお子さんを持つ親御さんに、特におすすめです。
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