マスコミに騒がれた郵便不正事件、私はこの本を読むまで村木厚子さんと検察との戦いについて、くわしく知りませんでした。
厚生労働省に勤務していた村木さんは2009年に逮捕起訴され、164日も拘留されました。
無実を勝ち取ることができたのは、検察側のフロッピーディスク改鼠が明らかになったから。
検察はメンツと体面にこだわり、無実の人を執拗に有罪にしようとしたのです。
本の感想をお伝えします。
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郵便不正事件
『私は負けない「郵便不正事件はこうして作られた」は、村木厚子さんのお話を元に、聞き手と構成を江川紹子氏が担当した本です。
えん罪の恐ろしさと、いくら抗弁しても検察側に不利なことは一切調書には残らないことに驚きました。
全く身に覚えがなくても犯人にされてしまう。
えん罪は古今東西、あります。
そして、日本でも起きていること。
- 電車での痴漢の疑いで検挙
- パソコン遠隔操作
- 犯罪のぬれぎぬを着せられる
だれもが警察や検察に突然、連行される可能性がないとは言い切れない。
村木厚子さんが郵便不正事件に巻き込まれたとき、まさか自分が逮捕起訴される事になろうとは想定外だったそうです。
郵便不正事件とは、ニセの障害者団体「凛の会」が、低料第三種郵便の制度を悪用した事件です。
その団体の元会長とともに、村木さんの部下だった上村勉係長が逮捕されました。
上村係長が、村木さんの指示でやったと供述したことが発端となり、村木さんは逮捕されるのです。
それは厳しい取り調べによる、検察官に誘導された自白でした。
検察のストーリー
日本の司法では逮捕され、取り調べを受けて起訴されたら、有罪率は99パーセント。
犯人なら自白は、当然しなければなりません。
しかし、やっていなくても、警察や検察のきつい尋問にあらがいきれずに、罪を認めることがある。
拘留期間は10日、延長できて20日間。
検察側は、最初から村木さんが指示して部下にやらせたというストーリーを描き、「私はやっていません」と何度くりかえしても、一切聞いてもらえなかったそうです。
郵便不正事件は、上村勉係長が凛の会がニセの障害者団体と気づかずに証明書を発行したというもの。
しかし、どうしても検察側は、部下に責任を負わせる厚労省の体質という図式にこだわり、フロッピーディスク改ざんに。
村木厚労省元局長を「犯罪者」に仕立て上げた前特捜部長を直撃(フライデー) | 現代ビジネス | 講談社(2/3)
組織の体面を保つために、無実の人を陥れても構わない。
検察の意識が衝撃です。
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母親としての魂
164日といえば5カ月以上も拘留され、その間は職を解かれたわけではないけれど、給与はなし。
敏腕弁護士をつけたり、家族が面会のため大阪の拘置所に出向く交通費も多額とのことで、一般の人が無罪を勝ち取るのはむずかしいと読了して感じました。
村木さんが検察の厳しい尋問や、誘導に負けなかったのは、娘さんふたりへの思いがありました。
高知大学を卒業して、厚労省に入省した村木さんは、働く女性の先駆け。
お茶くみやコピー取りなど、女性としての立場の弱さも痛感。
「娘たちに将来、辛いことがあっても、お母さんもあの時がんばったから、きっと自分も負けずに生きていけるんだと、思ってもらいたい。
だから、やっていない罪を認めることはできなかった」というようなことを、本で述べています。
逮捕から無罪を勝ち取るまで454日。
その後に、フロッピーディスク改鼠した前田恒彦主任検事は、最高検察庁に逮捕され、起訴。
懲戒免職になりました。
まとめ
秋の夜長に『私は負けない「郵便不正事件」はこうして作られた』を読んだら、眠れなくなりました。
私だったら3日で音を上げて、家に早く帰れるのならと、でっちあげ調書にもサインしてしまうかもしれない。
「子どもに会いたいだろう」とか、「親も心配しているぞ」とか気持ちをぐらつかせることを朝から夜9時過ぎまで言われて責められると、心神耗弱になるでしょう。
そこを堪えて、信念を貫かないと無実になりません。
もしもあなた自身や夫、子や孫がそういう災難に遭わないとは限りません。
そのためにも一読をおすすめする本の感想をお伝えしました。
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