2022年に公開される「ある男」の原作本を読みました。
平野啓一郎が書いた人間の本質を問う小説で、読売文学賞受賞作。
愛して子どもまで作った夫が急死し、夫の実家に知らせたら、身元のしれない人だった。
ネタバレしない感想や、本のテーマと急死なさった西村賢太氏の生き方が重なる部分がある気がしたのでお伝えします。
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ある男
弁護士の城戸が九州にすむ里枝から、相談をうけるところから「ある男」ははじまります。
再婚して幸せに暮らしていたのに、夫が木の伐採中に巨木の下敷きとなって命を落とした。
悲しみにくれるなか、夫の実家に知らせると兄が来て、遺影をみて「弟じゃない」というのですね。
戸籍や社会保障番号は本物なのに、誰と入れ替わっているのか。
現代的なミステリーです。
映画が公開されるのはもう少し先でしょうか。
妻夫木聡や安藤サクラが出演。
読みやすい文章で、ストーリー展開も見事です。
城戸弁護士も家庭の悩みや、出自にたいする引け目があり、人間くさい。
戸籍の売り買いという闇のマーケットも詳しく描かれています。
需要があれば、なんでも売りさばくプロ人間がいるのでしょう。
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苦役列車
54歳でご逝去なさった西村賢太氏は、『苦役列車』で芥川賞を受賞された日本の作家です。
タクシー乗車中に体調不良を訴え、意識不明に。
東京都北区の病院にて死去されました。
『苦役列車』は、10代の若者が中卒のため、体力勝負の日雇い仕事で自立するストーリー。
冷凍庫の荷下ろしや、造園業の手伝いなどでクタクタになりながら低賃金で働く。
映画化もされました。
『苦役列車』の主人公がなぜ中卒かというと、お父さんが事件を起こしたから。
それは女性を襲い、お金を奪うという強姦・強盗傷害事件。
実刑が下ります。
その事件のとき、主人公は小学6年生。
それまで運送店の経営者の息子として何不自由のない生活が一変して、学校で虐められます。
中学校にもあまり行けませんでした。
芥川賞の選考委員だった石原慎太郎が絶賛した『苦役列車』です。
この本のすごいところは、殺人こそ犯さなかったけれど、強盗傷害に強姦という犯人の血が自分に流れているかと思うとゾッとする。
生きていて良いのだろうかと切々と、訴えているのです。
私小説として、ご自分の苦悩を表現された破滅型の作家です。
まるで石原慎太郎が文学の後輩を、黄泉の国へと連れ去ったのかと思うような急死。
謹んでご冥福をお祈りします。
ネタばれなしの感想
『ある男』と西村賢太『苦役列車』が、どうつながるのか?
わかる方はもう察したことでしょう。
『ある男』の夫が身元を隠したかった理由は……。
そう、生きにくかったから。
世間に衝撃を与えた有名な事件であれば、あるほど。
この本を読んで、親のせいで世間から隠れるように生きなければならない方が、たくさんいるのだろうなと、感じました。
パチンコで借金なんて、まだ可愛いのかな?
パチンコが犯罪の元凶となるケースはまだまだ多いですね。
考えさせられる話題の本です。
まとめ
『ある男』を読んだので、ネタばれなしのレビューと、ご逝去なさった西村賢太さんに哀悼の意を込めて、お伝えしました。
54歳、早すぎます。
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