2020/06/29更新しました。
職業として、以前は人気が高かった美容師。
私の上の子は美容師となって約10年です。
専門学校を終えて東京都内の美容チェーンに入社しましたが、修業時代は長時間勤務が当たり前で、親の目には過酷に映りました。
風邪で熱があっても休めず腎炎になる人もいるなど、離職率が高い職種です。
激務をこなせる体力を持つ者だけが生き残れるといえるでしょう。
上の子の働き方を見つめた親の立場から、美容師という仕事について考えます。
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残業が殺人的に多い美容師という仕事
美容サロンは深夜まで練習があると聞いていましたから、私は上の子がその道に進むことは反対でした。
でも、ヘアーメイクがとても好きで、美に対する憧れも強く、高校を終えると地元の美容専門学校に進学。
美容学校の学費は2年間で教材費を含めて200万円ちょっと。(10年前です)
海外研修のあるところだと、さらに50万円以上かかりますが、うちの子が通った専門学校はヨーロッパなどに渡航しなかったので、少し割安でした。
就職が決まって
就職は、美容チェーンの担当者が面接のため地方の専門学校へ来てくれることがあります。
ある大手は、うちの子を含めて10名ほど採用しました。
地方の生徒を一括採用するため、仲間と一緒でホームシックになりにくいメリットがあります。
その美容チェーンは当時、30店舗以上の店を運営して利益をあげていたのです。
福利厚生はしっかりして、社会保険に加入できたのは幸いでした。
美容師の場合、国民年金や国保を給料から自分で支払わなければならないサロンが少なくありませんから。
寮生活
うちの子は美容チェーンで借り上げているアパートに、2人で住みはじめます。
同じ専門学校の仲良しとたまたま同じ部屋となって、助け合って生活を始めることができました。
手取りの月給は寮費と光熱費に社会保険料を引かれると、10万円足らず。
ですが、まずまずかもしれません。
美容サロンの賃金は低めなことがほとんどで、大卒会社員の6割くらいではないでしょうか。
給料が足りずに、アパート代を実家からの仕送りでまかなう人もいます。
毎日14~15時間の労働
美容師は国家資格で現在は専門学校を終えて、筆記と実技の試験に合格すると取得できます。
資格を持っていますが、新人社員はサロンでアシスタントから始めます。
シャンプーや掃除などの雑用と、集客のために駅前でチラシを配るのが主なタスク。
うちの子が勤めたサロンは午前10~午後8時までの営業時間で、午前8時には店に到着し、掃除や技術指導があります。
夜も練習があるため午後10時過ぎに、寮に帰る生活を送りました。
ふだんは疲れ果てて、夕食を摂らずに倒れ込むように寝る。
休日はひと月に6回。有給はあっても、めったに取ることはできません。
スタッフが休むと、店の仕事が回らなくなるのです。
数か月もすると、脱落する新人が出始めます。
- 風邪を引いて38度の熱があっても休めない。
- お昼ご飯が夕方6時にずれ込む
- 有給を取ろうとすると店長やマネージャーに叱られる
- 現場は常に売り上げ重視のため、スタッフ同士がギスギスする
- 食生活がコンビニ中心になり、体力がもたない
- 仕事のキツさとお給料が見合うものでない
ばっくれる後輩
私は、上の子とよく電話で連絡を取っていました。
あるとき、子どもが「また後輩がばっくれた。人が足りなくてトイレへ行く時間すら、もらえなくて参った」と、言いました。
ばっくれる?
意味がわかりませんでした。子どもが言うには、職場がイヤになって無断で逃げ出すようことだそう。
逃亡すると、その月に働いた日数があってもお給料を貰えませんよね。
「サロンと交渉しないの?」と、私。
「そんなことを考えるのも面倒なんだよ。もうね、みんな刹那的だから。きょう1日のことしか見えない。将来なんて誰も希望を持っていないし」
その当時、ブラック企業、ブラックバイトがメディアで騒がれて、ワタミの過労自殺もあった時期。
若者を使い捨てにすることでコストを下げて利益を確保する。そういう会社や事業所が多かったのです。
離職率
美容師は離職率の高い仕事して知られています。
就業率は40パーセント以下という明治大学の研究者の論文も。
離職理由について調査したところ、多かった回答は「業務内容の割に給与が低いから」、次いで「精神的に疲れる仕事だから」、「1 日に働く時間が長すぎるから」となった。そのほか、美容職独特の理由として、「薬品アレルギーなど、体質に合わなかったから」というものもあった。
参考元:明治大学関連サイト
うちの子は、胃炎や蕁麻疹(じんましん)に悩みながら、なんとか3年でスタイリストになりました。
それは、店が技術者を養成するために講習などを積極的に行っていたためで、その点は私も感謝をしています。
人間関係
勤めたサロンはスタッフが大体20名で稼働していました。
常に売り上げ重視のため、人間関係もギスギスして、失敗すると叩いたり叩かれたりと、お客さんの見えないところで暴力も。
結局、上の子は体を 壊す一歩手前で、退職することに。
限界だったに違いありません。
20~25歳まで働き、睡眠不足と野菜の不足で肌はぼろぼろ。
心身ともに疲れ切っていました。
スタイリストになる前に辞める人も多く、同期で残っていたのはうちの子も入れて2人しかいません。
辞めさせてくれない
すんなりと退職できたわけではありません。しつこく慰留されました。
「お前が辞めた後の穴を誰が埋めるんだ!」
店長は恫喝したり、なだめたり。
美容業界は常に人手不足なのです、都会は特に。
しかし、長時間の労働が常態化していますし、上の子はネットで調べて、労働問題を相談できる所へ駆け込みました。
それをきっかけに、辞職を許されたのです。
後輩のひとりは、「どうしたら円満に辞めることができるの?ばっくれることでしか解決できないと思っていました!」と。
美容師の卵は社会のことを知らないで労働市場に放り出される
美容師をめざす方は、2年間の専門学校の過程で技術的なことと衛生法規などを学びます。
しかし、労働者にも権利があって、長時間の労働は違反であることを知らない人があまりにも多い。
また、美容師の現場を経験することなく資本力で、複数のサロン経営に乗り出すオーナーも昔と比べるとずっと増えています。
すると、スタッフは生身の人間というよりは、いかに効率よく稼ぐ駒であるかという視点になるのではないでしょうか。
食事や睡眠を満足に取らずに、常に働き続ける人を雇用主は求めているようです。
スタイリストになるためには?
- 労働に見合わない賃金の低さにガマンできる
- 夜中まで続く練習の日々を乗り越える体力がある
- ひどい意地悪をされても、へこたれない精神力がある
- 寝不足がいくら続いても、体を壊すことなく立ち仕事で働くことが可能
- お客さんの要望やクレームににこやかに対応できて、コミュニケーション能力が高い
スタイリストになるには、人並み以上の体力が必要なので、学生時代に過酷な運動部を経験した人のほうが有利かも。
高い技術を身に着けて、顧客を心理的にも満足させられると、報酬が増えるのが美容師という仕事です。
サロンによってはスタイリストになると、歩合制の賃金体系のところもあるのです。
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技術があれば海外でも通用
うちの子はしばらく静養した後、日本の美容サロンは嫌だと言い、海外へ出ました。
マレーシアで暮らして、日本人オーナーの美容室に勤務しています。
マレーシアは日本人が3万人ほど住んでいます。実際の経済を握るのは中華系。
多民族国家で、人口が多いマレー系は敬虔なイスラム教徒です。
現在は比較的に治安が安定し、物価は日本のおよそ2分の一。
南国特有のゆったりとした空気が流れます。
ただ医療水準も高いけれど、場合によって海外医療保険がきかないことがあるので、注意が必要です。
日本の美容は技術レベルが高いため、海外で働くことは可能でしょう。
マレーシアは旧イギリス領だったこともあり、英語が必須。
うちの子はセブ島へ英会話の勉強に行きました。それから海外移住を果たして3年です。
まとめ
会社員となった下の子と比べると、上の子が経験した美容サロンはかなり過酷に感じました。それはインフルエンザ以外、具合が悪くても休めないから。
離職率の高さは、体力の問題が大きいと思います。
そして、スタイリストになってもさらに腕を磨かないと、お客さんを満足させられない。
上の子は「やりがいがある仕事!」と、情熱を傾けていますが。
センスと美容への憧れの強さがあれば、激務もこなせるのでしょうね。
尚、この記事は親バカ故に、独断と偏見に満ちていることをご了承ください。
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