今月、読んで印象深かった本が『現代の奴隷』モニーク・ヴィラ著です。
サッカーのワールドカップ・カタール大会では、炎天下に建築現場で働かされるネパール人やインド人が、話題になりました。
来日する外国人技能実習生のなかには、奴隷のような状態の人もいるとか。
本の感想をお伝えします。
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人身取引
著者は、だまされて人身取引された人達を丹念に取材しています。
1人目はジョニファー・ケンプトン
米国人の35歳。
ジョニファーは25歳のとき、恋人に騙されました。
「愛しているよ」
「君こそすべて」
「ずっと一緒にいたい」と、甘い言葉をささやき、女性をヘロイン中毒に堕とします。
心理的に操られていたことに気づいたのは、ずっと後。
次第に恋人は暴力を振るい、ジョニファーは売春婦に。
最後にはギャング組織に売られてしまうのです。
こういう支配のやり方を「グルーミング」といい、弱い立場の人に甘い言葉をかけて、すっかり信用させるのです。
世界中のあらゆる国において、支援を装って近づく人の懐に取り込まれていく。
安心感に惑わされたあげく、性的な仕事や強制労働に売られていくそうです。
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脅しの手口
最貧国といわれるネパールでは、親がわが子を教育や賃金の約束された職場へと送り出すことも。
人身売買のブローカーの口車にのり、貧しい親が子どもを売り渡す。
子どもはカトマンズの売春宿や、タダ働きの家政婦となり、虐待を受けることがほとんど。
反抗させず服従させるため、「口外するな。しゃべったらお前の親や兄弟を殺すぞ」と脅すそうです。
ILOは世界で約5000万人、つまり150人に1人が強制労働や強制結婚の状態にあると報告。5年前と比べて1000万人近く増えたことになる。
世界の5000万人が「現代奴隷」、武力紛争やパンデミックなどで増加=ILO報告 - BBCニュース
世界人口の150人に1人が奴隷の状態とは、怖ろしい。
強制結婚は、借金の形に少女が老人に嫁がされるケースがあります。
児童婚はまだまだ多いのでしょう。
現代の奴隷 身近にひそむ人身取引ビジネスの真実と私たちにできること [ モニーク・ヴィラ ]
日本も例外でありません。
日本に働きに来る労働者のなかには、ブローカーに多額の借金を負わされるから。
束縛と搾取。
他人から自由を奪う強制労働がこの世かなくならないのは、一部の企業や人間に莫大な利益をもたらすから。
YouTubeには、外国人技能研修生についても、解説しています。
まとめ
『現代の奴隷』の本は、ショッキングな1冊です。
騙しのテクニック「グルーミング」は、男女の間にもあること。
虐待やネグレクトの傷を負った少女が、愛に飢えて餌食になることも。
夏休みも終盤なので、機会があったら図書館で借りるなどして、読んでみたらいかがでしょうか。
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