主婦の友社から出版された『きらいな母を看取れますか? 関係がわるい母娘の最終章』寺田和代さんの本を読みました。
傍目には仲が良さそうに映っても、実は親が支配的だったり、体面を重んじて子どもの気持ちを無視したり。
そういう親子の実情が描かれています。
40代50代になったとき、親の介護で負担を感じる方は多いでしょう。
自殺の原因の上位に介護疲れがあるとされる現在、参考になる本をお伝えします。
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家族幻想
どんな確執があったとしても、高齢の親にはやさしく接するのが、人の道だ。
こういう言葉って、ときに子どもたちを追い込むことがあります。
日本は、中国や韓国ほどではないにしても、儒教的な教えが底流にある国。
儒教は孔子が説いて、人を思いやる「仁」や、親を敬い孝行を尽くす「孝」などを重んじます。
親子関係が良好なら、親孝行は素晴らしい。
しかし、子どものころから辛い記憶しかないときは、わがままな老親にいつまでも振り回され、自分の生活が立ちゆかなくことも。
『きらいな母を看取れますか?関係がわるい母娘の最終章』の著者である寺田和代さんは、お父さんを自死で子ども時代に亡くしました。
それから、母は再婚。
新しい父と、誕生した弟と4人暮しとなります。
そして、自死した父のことはタブーとなり、継父からは「生意気だ」と殴られる日々。
母は、かばうどころか継父以上に暴言と暴力で彼女を痛めつけたそうです。
大人になり、絶縁しますが、母はガンに。
「お母さんに優しくしてあげて。親子でしょう」と他人に幾度も言われて、そのたびに複雑な気持ちになったことが、この本を書くきっかけとのこと。
母と娘は、密接につながりになりやすく、様々なケースがあります。
娘の人生を乗っ取る母
この本には6人の女性の生育歴と、大人になっても親から いかに干渉されたかが、語られています。
- 子どもの頃から母親の思い通りに支配されてきた
- 大学を終えると、強制的に地元に帰郷
- 就職先の決定権は親
- アルコール依存の母親
- ギャンブル依存の父親は会社ではエリート
- 権威を振りかざして恩返しを求める親
なかにはストーカーのように、娘につきまとう母親もいるんですね。
結局、友達もいなくて、娘にしがみつくしかない母親なのです。
そういう親が老いたとき、実の娘は介護を拒否できるのか。
それが、この本のもう一つのテーマです。
世間は老親の味方
娘がいるのに、高齢の親の世話を放り投げて、福祉に丸投げなんて、どういうつもりなのッ!!
残念ながら、世間はそう見るでしょう。
強固な母性愛神話が根付いているので、娘がいくら母との関係が良くないのだと言っても、「親子なんだから、仲良くしなさい」と諭される。
あるいは、「親にはやさしくして」と叱られる。
これは私も、覚えがあります。
あるとき、親戚から責められました。
「育ててもらったのに、あることないことを言うなッ。
お前には人の心がないのか」
頭ごなしにそういう親戚に限って、必要な手助けはしてくれません。
たとえ当事者の親が借金トラブルを抱えても、親身になることはなく、常に逃げ腰です。
ひどく辛い体験をしたため、心理的にどうしても親の介護がむりだと感じたとき、できる手立てをこの本は教えてくれます。
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法的な解釈
介護を家族間の美しい愛情にからめて、孝行息子や孝行娘の美談に仕立てようとする文化があります。
現在では、個々の事情があることを理解する介護職の方もいるとのこと。
そして、親子の縁は法的に切れないのが現実。
親と同居しているときは、とくに老親を保護し、ケアする義務が求められます。
世帯が分離 されているのなら、子の経済に余力があれば親に援助することを行政は求めます。
しかし、大人になった子どもの経済力が乏しいときは、むりして援助せよとは国も言わない。
冒頭に紹介した儒教の思想が、中国の孔子によって生まれたのは紀元前 です。
その頃は、まさか人間が100年も生きるとは想像できなかったでしょう。
老後の親子破産は、切実な問題です。
私は「きらいな母を看取れますか?」を読んで、老いても娘に頼ろうなんて考えてはいけないのだと思いました。
娘の負担になるまで、長生きするのは考え物だと感じた次第です。
読み終えて、これからは親の介護を拒否する子ども達が増えそうな予感。
団塊世代が後期高齢者になる時代、お年寄りが棄民というのは何とも悲しい。
しかし、コロナが収束しても実体経済はボロボロ。
株を保有する資産家以外は、家計にゆとりがありません。
老人が手厚くケアされる時代の終焉に、親の介護はますます問題になるでしょう。
57歳の私は、自分の20年後が怖ろしい。
長く働けるように、足腰を鍛えてピンピンコロリを目ざそうと思います。
まとめ
『きらいな母を看取れますか?関係がわるい母娘の最終章』は、仲良し家族の幻想に一石を投じる本です。
何よりも自分の人生を大切にしよう。
そのことも力説。
母娘にスポットが当たっていますが、父親と息子や父親と娘にも応用できそう。
高齢の親に振り回され、疲弊している方にオススメです。
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