2020/07/11更新しました。
2020年はコロナ禍により、仕事を休業したり、失業したりするケースが増えています。そのせいか生活保護を申請する人が急増という報道を、よく耳にするようになりました。
武田知弘著『生活保護の謎』は、祥伝社が発刊した新書。
なぜ申請できない人がいるのか、日本で餓死者が出るのはどういう場合かについても書いてあるので、本を読んだ感想をお伝えします。
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生活保護
著書の武田知弘氏は1967年、福岡県出身。
国税庁で税金徴収の実務に就き、バブル崩壊後の1999年に大蔵省を辞めて、ライターとなった経歴の持ち主です。
表紙扉にこうありました。
「今の生活保護という制度は、これをだまし取ろうと思っている者にとっては非常に便利で、本当に困っていて、国の助けが欲しい者には非常に不便な制度である」
では、なぜ困っている人には、ハードルが高いのでしょうか。
生活保護を受ける条件
本人に収入および資産があるがどうか。
生活保護を受ける条件は、これに尽きます。
2012年にお笑い芸人が売れっ子のため高年収であるにもかかわらず、関西に在住の母親が生活保護を受けているのがバレて、大問題になったことがありました。
- 民法では、親族に扶養の義務はある。しかし「扶養したいけれど、経済的に無理です」と言われたら、役所はそれをくつがえすことができない。
- 役所は申請者の金融口座や資産を調査する権限はあるが、親族にまでは及ばない
- 生活保護法に、親族にどのくらい財産があれば、どのくらい扶養義務が生じるか等の具体的な規定がない
それにしても餓死するほど困窮しても、受けられない人が いる現実に、どう対処すればよいのでしょうか。
そこに高齢者の格差や、年収100万円以下の ワーキングプア、自治体に裁量が任されていることが絡み合っていることを、本を読むことで知りました。
順を追ってひもときたいと思います。
音信不通の父が「生活保護」受給、扶養義務があると連絡が来た…どう対応すれば? - 弁護士ドットコム
低年収や老い
お年寄りはお金持ちだ。
そんなイメージがありますが、本書によると高齢者の中には無年金だったり、低年金だったりして生活に困っている人が、かなりいるとのこと。
困窮している高齢者が激増している。
それが、日本のまぎれもない事実。
さらには、日本では若い人でも、ワーキングプアやネットカフェ難民が増えています。
非正規やパート労働者が増えて、希望しても正社員に登用されない。
これは小泉政権下での経済政策により、雇用の流動化が進められたのが大きな理由。
その一方で、株で大儲けたり、事業が成功したりの富裕層が増えて、格差が開くばかり。
水際作戦とは?
生活保護の費用は、4分の3を国が出して、4分の1を地方自治体が出しています。
その4分の3も、国が無条件にだしているのではなく、地方交付税のなかでまかなう。
なので、生活保護費が増えれば、自治体の財政が圧迫されます。
水際作戦とは、生活保護の申請をさせないこと。
具体的には、窓際でいろいろ難癖を付けて、追い返す。
著者の取材では、人格否定されることもあるそうです。
申請者の7割は窓口で追い返される。
それから、受給を打ち切らせるという手法もあります。
誘導して、辞退届を書かせる。
でも、これらは違法とのこと。
役所の窓口で、「まだ働けるのではないか」とか、女性に対しては「なんなら夜の仕事をしたらどうか」と言われて、二度と役所に行きたくないと考えたら、それは向こうの思うつぼ。
しかし!
生活保護の申請をさせないことは、違法です。
理由は、役所は申請されたら、受理するのが原則だから。
その上で資産があったら、却下となる。
なお、生活保護の申請ができるのは、手持ちのお金が12万円以下で、車の所有は原則には、認められません。
また、自分の暮らしがギリギリなとき、親を扶養しろと言われたらどうしたらよいでしょう。
困窮した親が生活保護を申請すると、血族には扶養義務の確認書類が送られてきます。
株や国債などは現金化して、生活に使い切ってからでないと申請できません。
生命保険等も解約して、解約返戻金を生活費に使い切ってからの話となるでしょう。
金融機関に照会されるので、口座に10万円以上の残高があると、自治体によっては却下される可能性があります。
親が生活保護申請したから扶養義務のお知らせが届いた話|manatsu|note
もし子ども世帯が高所得のときは、親に援助したほうが絶対よいです。
そうでないと、某芸人のように、世間から糾弾されることがあるので。
しかし、この長寿時代、何十年も援助できるか。
むずかしいところですね。
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受給したいときは?
本当に暮らしに困ってしまって、電気やガスも止められ、空腹で目が回りそうな人は申請すべきです。
それもヤミ金から借りる前に。
あるいは路上生活になる前に。
では、なんども窓際作戦で追い返されたら、どうしたらよいでしょう?
ここからは、資産の処分をしてからの話です。
まずは、福祉事務所の窓口へ行きます。
- 現在の収入状況
- 仕事があるかどうか
- 資産がどのくらいあるか
- 家族や親族が助けてくれるか
面談では答える必要があります。
心身がボロボロで、うまく答えられない方は不利になるかもしれません。
福祉事務所ではときに、意地の悪い質問もあるそうですから。
「申請するのは私の権利ですから、私の権利を侵害しないで下さい」
気丈夫にそう話すことが、ポイントです。
また、「家族や親類に支援してもらえないのか」と言われたら?
家族や親類の支援が見込めないことを、はっきり意思表示することが大切です。
窓口では、おどおどと弱気だと追い返される率が高まる。
なお本書では、福祉事務所のやりとりを、メモすることをすすめています。
なかなか申請書をもらうまで、一筋縄ではいかないことがありそうです。
持ち家でも生活保護が認められるケースがありますが、住宅ローンを抱えているときは、家の処分が先決とのこと。
どうしても受け付けてもらえないときは、弁護士に同伴してもらうと、役所の対応がガラリと変わるそうです。
また、この本には貧困ビジネスや、福祉アパートについても言及のページがあります。
まとめ
コロナ禍により、企業の業績が悪化しています。
求人もガクンと下がりました。
不正受給は言語道断ですが、子どもを抱えて飢えるほど困窮しているときは、生活保護を申請すると、救われそうです。
「生活保護の謎」を読んで、水際作戦などにショックを覚えたので、レビューしました。
自助努力をしても体具合が悪くて、お金に困ることはどなたの身の上にも起こりうることです。
法的なことは覚えておいて損はしないと、感じる一冊です。
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