2020/07/11更新しました。
臨床心理士の信田さよ子氏といえば『母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き』など、社会的に大きな反響を呼んだ本の著者です。
今週『母・娘・祖母が共存するために』を読み、私自身、深く反省するところがありました。
自分は毒親でない。
そう思っていたのですが、娘たちからしたら、重たい母だったかな。
母親との距離がむずかしいと感じている方にオススメの本をレビューします。
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毒母とは?
この本には、さまざまな母親と娘が描かれています。
母親の過干渉や、支配的な態度あるいは言動に傷つく娘たち。
著者の信田さよ子氏が、知り合った編集者やカウンセリングしたときを下敷きにしているので、読み応えがあります。
前半は、家族観が歴史とともに、移ろってきたことを解説。
- 家族愛帝国の難民女性たち
- 毒母という言葉を点検する
- 1995年という転換点
- 母娘関係をめぐる歴史
- 団塊世代の男たち……
目次だけでも20項目あるのですが、後半にいくにしたがって、たいへん興味深く読みました。
高齢者の激増に伴い、母娘関係は3世代を射程にしなければならないほど複雑化している。
ところで、私にはふたりの娘がいます。
32歳と29歳の娘たちはそれぞれ結婚して、実家から遠く離れて生活。
たまにLINE電話をくれるので、親子の仲は良いと思っていました。
しかし、この本を読んでみると、離れているからこそ、家族が結束できているのかなと感じたのです。
当たり前のことですが、娘は50歳になっても60歳になっても、親が生きているかぎり娘なわけですね。
親と密につながるほどに、息苦しい。
堪えきれないほど、老いた母親が重い。
中年となった娘からの告発は、読んでいて胸に迫るものがありました。
幼い子どもは親に逆らえない
家庭は密室。
玄関ドアや窓を施錠して、カーテンを固く閉じてしまえば、内部でどういう修羅場があっても、漏れにくい。
しかも世間のイメージとして、どんなときも母は、子どもを守り慈しむ存在です。
なかには1週間以上も3歳の子どもをネグレクトして、死なせるケースがあるけれど、やっぱり稀。
多くの母親は懸命に育児しています。
さて、 私が『母・娘・祖母が共存するために』を読んで、もっとも驚愕したのは、教育虐待のページです。
教育虐待の凄まじさ
お受験という言葉があり、都会では有名私立小学校や、中高一貫校に進学させたい親御さんもけっこういることでしょう。
あるいはピアノやバレエをはじめ、テニスや水泳など習い事をお子さんにがんばって欲しい親御さんもいますね。
この本で問題にしているのは、親が果たせなかった希望を子どもに強いること。
極端なケースでは、受験勉強がきっかけの親による子殺しです。
名古屋教育虐待殺人事件
この父親は、小学6年の実の息子を包丁で殺害しました。
動機は、子どもが素直に勉強しないから。
受験に向けて父親が子どもに勉強を教えていましたが、この父親は大学を終えていません。
この殺人犯となった父親は、そのまた親から薬剤師になることを押しつけられ、挫折していました。
親の学歴コンプレックスの犠牲となった6年生の子ども。
とても痛ましい事件です。
ところで、家庭内で家族に向けるために、包丁を持ち出すものでしょうか?
本の中で信田さよ子氏は、こう述べています。
驚かれるかもしれないが、家族間の喧嘩や争いに包丁が登場することはそれほど珍しくはない。
カウンセリングでよく耳にする。
父親が酒に酔うと誰も指示しないのに子ども達が包丁を隠す、盆や正月で親族が集まるときは事前に必ず刃物を隠しておく、という例はアルコール依存症の問題に関わっていると日常的ですらある。
参照元:『母娘祖母が共存するために』127ページ
さらには酔っていなくても、子どもの一言が原因で包丁を持って追いかけ回すケースも。
包丁などで脅すのは、多くは父親。
あるとき、私の知人も、自分の父から武器で脅されたと話しました。
ちなみに武器とは、日本刀です。
抜き身を振るうことはなかったそうですが、紫の布に包まれた日本刀は怖ろしかったとか。
日本刀は美術品として鑑賞する分には届け出はいりませんが、武器として使用すると、銃刀法違反になります。
一般家庭でも、日本刀などがあることを想定しながら、家族間のトラブルに対処したほうがよいでしょう。
それにしても家庭は密室であり、こじれると近親憎悪となるため、厄介です。
日本は家族間の殺人が全体の約半数ですが、表面に出ない殺人未遂はかなりな数になることでしょう。
話が逸れましたね。
教育虐待は、親自身の劣等感と相まって、子どもを思い通りにしようとするエゴから生まれるに違いありません。
殺人に至るケースは稀ですが、子どもが精神的に破壊されて、引きこもりなど中年期も引きずることがあるそうです。
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祖母
長寿時代ですから、90代でも元気な方が多い。
ということは娘は60代になっても、親に振り回されてしまうことがあります。
この本には、母親が高齢だからと同居したために、疲れ切ってしまう娘のケースが載っていました。
習い事やサークル活動で活き活きとした80代や90代の母親の言動、ひとつひとつが娘の心に刺さる。
鏡を見たらがっくり老けた自分と、ちっとも変わらない母親の姿にショックを受けたとか。
そのほか孫かわいさの余り、娘夫婦に何かと口を出す祖母が出てくるので、私自身、とても反省。
娘夫婦に口出しして、よいことはありませんね。
出していいののは、お金や果物の宅配くらいでしょうか。
親の自立が大切
親が子どもに過干渉になったり、口出ししたりするのは、親自身の毎日が充実していないせいかもしれません。
教育虐待も、自分が努力するより、子どもに強いたほうが楽ですもの。
そうではなく、親が自分の研究やボランティア活動にいそしむ背中を、子どもに見せた方が、よほど将来の役に立ちそう。
母と娘、祖母をテーマにした本書とともに、「後悔しない子育て 世代間連鎖を防ぐために」も、勉強になる一冊です。
まとめ
小学生の低学年までは、親は子どもから目を離さずに、しっかり養育する義務があります。
しかし、10代になるにつれて、徐々に子どもは友達とのつながりを大切にします。
そして、やがては独り立ちして結婚。
子どもが生まれることでしょう。
そのとき、祖母は産後ケアなど手助けしますが、あまりにも孫を溺愛すると、娘夫婦が困惑することがあります。
距離を取りつつ、なごやかな関係を築きたいですね。
信田さよ子著「母・娘・祖母が共存するために」をレビューしました。
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